慶應合格者からの質問集

慶應付属中合格者からの質問集#5 「『軟水』と『硬水』って何ですか?」

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たくと
たくと
はじめまして、そうでない方は改めまして。

このブログは、慶應付属中専門の塾講師・家庭教師のたくと( @tact_roadtokeio ) がお送りしております。

さて、今回は「慶應付属中合格者からの質問集」の第5回をお送りします。
(第1回~第4回の記事はこちらのカテゴリー(↓)からどうぞ。)

カテゴリー「慶應合格者からの質問集

今回も、慶應付属3中学に合格した生徒さんが受験生時代にしてくれた質問や疑問を通して、慶應付属3中学が求めている「知性」というものについて少し考えてみましょう

慶應付属中合格者からの質問#5 「『軟水』と『硬水』って何ですか?」

第5回目の今回は、おととし慶應湘南藤沢中等部に合格した生徒さんが小6のときにくれた質問です。授業の休憩中にミネラルウォーターを飲んでいたときのふとした会話から始まりました。

慶應受験生
慶應受験生
ん?なんだろうこれ?

たくと
たくと
お?どうかした?

慶應受験生
慶應受験生
ペットボトルのラベルを見ていたら、「軟水」って書いてあって、なんだろなって思って。

たくと
たくと
お、いいとこに気づいたね。水はね、「軟水」と「硬水」の2つに分けることができるんだよ。

慶應受験生
慶應受験生
へー!知らなかった!

たくと
たくと
それにしても、すごくいい気づきだね!テキストとかじゃなくて日常の中から疑問を見つけ出してそれを深める力って、慶應がすごく求めている力なんだよ。

慶應受験生
慶應受験生
そうなんだ!やった!

たくと
たくと
じゃあ今日は、軟水と硬水についてまずはちょっと考えてみよう!

その日の授業は、そんな感じで始まりました。

水の中には「ミネラル」が含まれている。

さて、冒頭にもあったように、僕らが普段飲んでいる水は、大きく分けて「軟水」と「硬水」に分けられます。

でも、「軟水」と「硬水」が一体何なのかを知るためには、その前段階として「水の中に含まれるもの」について知る必要があります。

僕らの飲む水(飲料水)の中には、何が入っているのかを知っていますか?

「いや、水だけでしょ?」、そう思われる方も多いかと思います。でも実は、飲料水の中には、水以外に「ミネラル」と呼ばれる成分が入っています

ミネラルというのは、僕らの体を構成している主要4元素(炭素、水素、酸素、窒素)以外の元素のことです。主なものとしては、カルシウムリンカリウムマグネシウムなどが挙げられます。

市販の飲料水には、成分としてこの「ミネラル」が含まれているから「ミネラルウォーター」と呼ぶわけです。

そのミネラルを測る指標が「硬度」。

そんなミネラルウォーターですが、スーパーやコンビニに行くとかなりの種類のミネラルウォーターが並んでいますよね。

パッと思いつくのを書いただけでも、南アルプスの天然水、いろはす、エビアン、ボルビック、クリスタルガイザー・・・など、まだまだたくさん浮かびます。

僕らは市販の飲料水を「ミネラルウォーター」と一言で言いますが、実はそこに含まれるミネラルの量は、ミネラルウォーターの種類によって大きく異なっています

そしてこのミネラル量が多いか少ないかによって、水の味水の使用用途が変わります。だから、購入するタイミングで僕らはそのミネラル量を把握したいところです。

そこで、飲料水中のミネラル量を表す指標として「硬度」が作られたわけです

「硬度」は、以下の式で算出されます。

硬度 = (1L中のCa量)×2.5 + (1L中のMg量)×4

飲料水中にはカルシウム(Ca)マグネシウム(Mg)の2つのミネラルが多く含まれているので、この2つの量を用いて硬度は算出されます。マグネシウムの方により大きな数を掛けているのは、マグネシウムの方が水の風味に影響を与えるからです。

ではここで、実際のミネラルウォーター2つを使って、ちょっと具体的に計算してみましょう。

まず1つ目は、日本のミネラルウォーター。

成分表示を見てみると、

100ml中のカルシウム量は0.89mg。1L(1000ml)に換算すると8.9mg。
100ml中のマグネシウム量は0.33mg。1L(1000ml)に換算すると3.3mg。

よって、硬度を計算すると以下のようになります。

硬度 = 8.9×2.5 + 3.3×4
   = 22.25 + 13.2
   = 35.45

実際に表示されている硬度を見てみると、

ばっちりですね。

お次は、ヨーロッパのミネラルウォーター。エビアンです。

成分表示を見てみると、

100ml中のカルシウム量は8.0mg。1L(1000ml)に換算すると80mg。
100ml中のマグネシウム量は2.6mg。1L(1000ml)に換算すると26mg。

よって、硬度を計算すると以下のようになります。

硬度 = 80×2.5 + 26×4
   = 200 + 104
   = 304

実際に表示されている硬度を見てみると、

こちらもばっちりですね。

硬度の違いで「軟水」と「硬水」に分けられる。

こんなふうに算出される硬度ですが、この硬度の大小によって飲料水は「軟水」と「硬水」に分けられます

具体的にはWHO(世界保健機関)によって以下のような分類基準が設けられており、大まかに見ると「軟水」「硬水」の2段階、より細分化すると4段階に分けられています。

  • 硬度が0~60  :「軟水
  • 硬度が60~120:「中程度の軟水
  • 硬度120~180 :「硬水
  • 硬度180以上  :「非常な硬水

なので、先ほど計算してみた2つの水は、

1つ目(硬度35.45)は、軟水
2つ目(硬度304)は、非常な硬水

ということになります。

日本は「軟水」、ヨーロッパは「硬水」の理由。

さて、ここからもう少し深めてみましょう。

同じ「ミネラルウォーター」なのに、なぜこんなふうに硬度の違いが生まれるんでしょうか?

これは少し、地理の要素が入ってきます。

日本の国土を考えてみると、ヨーロッパ全体に比べて狭いですよね。ということは、日本の川は世界の川と比べて長さが短いということになります。

それはつまり、日本の川の水はミネラルを多く含む岩や土との接触時間が短いということなんです。だから、日本のミネラルウォーターはミネラルが少なく、硬度も低くなるわけです

一方、エビアンなどが取れるヨーロッパは、川の長さが日本に比べて長いため、岩や土との接触時間が長くなります。さらにそれだけでなく、接触する岩には石灰岩(ミネラルが大量に含まれる)が多いため、ヨーロッパのミネラルウォーターはミネラルが多く、硬度も高くなるわけです

硬度の違いにより生まれた日本とヨーロッパの食文化の差。

また、日本とヨーロッパの硬度の違いは、実は食文化にも影響を与えています

ミネラルの多い硬水は、料理に使用すると灰汁(あく)を出しやすかったり、うまみ成分が出てくるのを妨げるといったデメリットがあります。

そのため、硬度の低い日本の水(軟水)は実は料理に非常に適していて、だから日本にはお味噌汁やお茶など水分豊富な食文化が生まれたんです

一方で、硬度の高いヨーロッパの水は料理にあまり適していないため、ヨーロッパでは水分の少ない料理が多かったり、水分を加えたい場合にはワインを使うワイン煮などが生まれたわけです

ちなみに、ヨーロッパは肉料理などミネラルの少ない食事がメインのため、ミネラル不足になりがちなんです。そのため、飲料として水(硬水)を飲むことによってミネラル不足を補う習慣が生まれました。

思えば、日本でミネラルウォーターが普及しだしたのも比較的最近の話です。ヨーロッパでミネラルウォーターを飲む習慣が生まれていたから、それが日本に入ってきて、そこに日本独自の軟水ミネラルウォーターが投入されたことで、日本でもミネラルウォーターの習慣が根付いたと言えるでしょう。

まとめ。(慶應付属3中学は自発的探究心を求めている。)

慶應受験生
慶應受験生
この「軟水」って書いてあるラベル1つから、算数だったり地理だったり理科だったり、めちゃくちゃたくさん学べますね!

たくと
たくと
ね!水ひとつから、かなりたくさん学べるもんだよね。

慶應受験生
慶應受験生
なんかもっと広げて学びたいなー!

たくと
たくと
お!いいね!その探求心が慶應でかなり求められているんだよ。ま、でもひとまずは今日やるべきことを終わらせて、時間に余裕があれば深掘りしよっかね!

慶應受験生
慶應受験生
ですね!

今回見てきたように、実は身の回りにある疑問をきっかけに、そこから派生させてかなり広範囲のことを学んでいくことができるんです。そしてこの作業は、先生や親御さんの補助がなくてもお子さん本人でぐんぐんやっていくべき作業なんです。

この自発的な探求が、慶應付属3中学では強く求められています。だから、入試問題でもそこを問う問題が散見されます。

でも、この自発的探求心なかなか育めないのが今の塾業界のかなり大きな課題なんです。やはり集団スタイルではそこまで育めない。

だから、ご家庭、個別指導、家庭教師のどれかでその自発的探究心を育む工夫をしていく必要があります。そしてその工夫は、実は親御さんが一番影響を与えることができます

例えば今回のようなミネラルウォーターに関する話を、お子さんが興味の持てるように日常の中でさりげなく話す。そんなことを繰り返すことで、お子さんの知的好奇心を喚起し、知性を育んでいけるわけです。

このブログではそういう「日常の中でさりげなく話せる」ようなテーマをこれからもできるだけたくさん書いていけたらと思っています。よかったらまた読んでみて下さいね。

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というわけで、今回はこのあたりで。

これからも「慶應付属中合格者からの質問集」を追加していく予定ですので、もしご興味あるようでしたらブログのブックマークを、もしくは更新情報を投稿しているtwitterのフォローをよろしくお願いいたします。

ではでは、ご覧くださってありがとうございました。

また次回、お会いしましょう。