慶應付属3中学合格のための心得

慶應付属3中学が求めているのは「知性」。それを身に着けるために必要なことは何か?

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前々回の記事で、

  • 塾の授業内容だけで慶應付属3中学に合格できる時代は10年前に終わっている
  • 塾で学ぶ」だけの状態から「日常から学ぶ」への切り替えが必要不可欠。
  • 言い換えると、「受験勉強」から「学問」への切り替えが必要不可欠。

ということをお話ししました。(前々回の記事はこちら↓。)

世の中にはかなりたくさんの塾が存在していますが、どこの塾に通っていようが、どんな形態の塾に通っていようが、塾で学ぶ内容自体にはほとんど大差はありません。すなわち、塾で習うことというのは受験生みんなで共通しているんです。

慶應付属3中学を始めとする上位校・進学校は、それが習得できていることは大前提のようなもので、そのうえでの差別化要因として「日常から学んでいること」・「学問できること」を求めているわけです

それは言い換えると、

  • 知性」を持っているか
  • 知的好奇心」を持って物事に接することができているか

が問われているということなんです。

なので、今回はどうやったらその「知性」や「知的好奇心」を身に着けることができるのかを考えていきましょう。

知性・知的好奇心を身に着けるのに必要なのは「習慣化」。

慶應付属3中学が求めている「知性」や「知的好奇心」を身に着けるためには一体どうしたらいいのでしょうか?

そもそもに戻って考えてみると、「知性」を持っている、「知的好奇心」を持っている、というのは行動ではなく状態です。だから、何かを短期間で行うことですぐに身につくわけではありません

ではどうしたらいいのか。

それは、知性や知的好奇心を刺激するようなことを日常の中で「習慣化」させて、その習慣を継続することで蓄積させていき、それが当たり前の状態にするという方法しかありません

だから、「どんなことを習慣にするか」と「どうやって生活の中に無理なく組み込むか」の2点が重要になってきます。

知性を育むための習慣化の中で必要な要素は「活字」と「大人向け」

また、知性を身に着けるための習慣化の中で特に必要な要素が2つあります。それは「活字」と「大人向け」という2つのキーワードに集約されます。

要素①「活字」:授業や動画ではなく「活字」から学べる人が求められている。

まず1つ目の「活字」から見てみましょう。

世の中の情報は時代とともにどんどん簡略化されてきています。情報を得たいとき、「何」から情報を得てきたかの変遷を考えてみると、以下のようになっています。

  • 「本」:1ページ600文字×200ページ=120,000ページ文字
  • 「新聞」:1ページ12,600文字×40ページ=504,000文字
     ↓
  • 「ブログ」:1000~5000文字
     ↓
  • 「twitter」:140文字
     ↓
  • 「Instagram」:ほぼ文字なし。写真+短文。
     ↓
  • 「YouTube」:ほぼ文字なし。映像のみ。

そう、どんどん文字数が減ってきているんです。人によっては文字から学ぶことが皆無なんです。

賢い人って、本を読んでいるイメージがあったりしませんか?そのイメージ、すごく正しいんです。これって単純に「情報の量」を考えてみれば当然のことなんです。例えば、同じ勉強をするとして「本(活字)」と「授業(音声+α)」で比べてみましょう。

1時間で何かを情報を得ようとしたとき、本といった「活字」を通して得られる文字数は約30,000文字(日本人の1分間に読める平均文字数500文字×60分)。

一方、授業から得られる文字数は最大でも約18,000文字(分かりやすい授業の発話スピードは1分間で300文字×60分)です。しかも授業の場合、ノートを取る時間がかなり多く、得られる文字数としては半分ほどになります。なので少し多く見積もっても10,000文字でしょう。

そう、約3倍もの差があるんです。しかも、本を読んでいる人は、塾で授業を受けるのとは別で読んでいるため、塾+本で合計で約40,000文字になるわけです。すなわち約4倍もの差が生まれるわけです

これが、授業だけ受けている受験生よりも、本を読む受験生の方が圧倒的に賢くなる理由です。

昨今、本や新聞から情報を得る人はどんどんと減ってきています。言い換えると、簡略化された情報からしか学ぶことのできない人が増えているということです。慶應付属3中学を始めとする上位校・進学校を目指したいのであれば、簡略化されていない情報、すなわち活字」から学べることがとても重要な要素になります

よって、知性を身に着けるためには「活字」を通した習慣が必要になってきます。

要素②「大人向け」:優秀な「小学生」ではなく、「大人化を始めた子」が求められている。

知性を育むための習慣化の中で必要な要素のもう1つは、「大人向け」です。

「中学受験には小学校で学んだ内容しか出ない。だから、それ以外のことを学ぶ必要はなく塾のテキストだけを何回も反復演習することが大事だ。」なんてことをいう塾の先生が結構多くいます。

でも、この考え方は、子どもの知性・知的好奇心の成長を著しく阻害します

小学生だから小学生の内容で充分、という考え方は、知的好奇心をどんどん掘り下げて知性を作るという作業を不必要なタイミングでストップさせてしまいます。

  「宇宙ってなんで暗いの?」
  「あ、それは小学校でやらない内容だから考えなくていいよ。」

  「酸性とアルカリ性はなんで性質を打ち消し合うの?」
  「それも事実だけで大丈夫。打ち消し合う理由は中学以降で習うよ。」

  「虹ってなんで7色なの?」
  「それは高校でやるから、今は大丈夫。」

  「子どもが親に似るのって遺伝って聞いたんだけど、遺伝って何?」
  「それは中学と高校でやるよ。お楽しみにね。」

子どもの中からせっかく生まれた疑問なのに、そうやってはぐらかしてしまうと知的好奇心は一向に満たされず、質問しても無意味だと感じてどんどん受け身のスタンスに変わり、そして知性が育まれぬまま時間が経過することになります。

(ちなみに上記のような疑問をテーマにした問題は上位校・進学校ではしばしば出題されています。)

よって、知性を育みたいのであれば、小学校の範囲かどうかという尺度を取っ払って、「知りたいことはとことん知る!」というスタンスを許容するべきなんです。子どもが知りたい深さまで、どんどん掘り下げてしまえばいいんです

それはすなわち、「小学生の範囲」で留まることをやめて、学習や興味の対象を「大人の範囲」まで広げていくということです。これが2つ目の要素になります。

「知性」を日常で身に着けるための5つの習慣

では、具体的にはどんなことを習慣にしていったらよいでしょうか?

今回は5つの方法を書いてみます。

おそらくこれから挙げる5つの方法は、一見簡単に見えるかもしれません。そして、実際に簡単です。小学生でもできることでなければ意味がないので、「簡単に手を付けることができる」かつ「継続しやすい」ものに絞って5つの方法を挙げてさせて頂いています。

習慣①:週に1冊の「本」を読む。

知性を育むうえで欠かせないのは、「活字」の代名詞である本を読むことです。これがもっとも効果的です。必須といってもいいでしょう。

ただ、これを習慣化させることが難しいですよね。お子さんの性格ごとに適した習慣化の方法が無数にあるので一概には難しいですが、習慣化させるための工夫としては以下のようなものがあります。

  • 「何か本読みたいなー!」と親御さんが本を読むことを始めて、そこに子どもを巻き込む。
  • 一緒に本屋に行って、好きな本を親子で1冊ずつ買う。
  • Amazonで一緒に本を探して、レビューを見て盛り上がる。
  • 志望する中学校で出題された本を買って挑戦してみる。
  • Kindleタブレットを購入して、本を読むことでタブレットを触りたい欲求を満たしてあげる。
  • 新しい本棚を買って、そこには読んだ本のみを入れるようにする。そうやって、「本棚を満たす」というのを楽しみにしながら習慣化する。

などなどがあります。

また、読んだら手短でいいので要約するようにしましょう。要約に負荷を感じるのであれば、親御さんや家庭教師の先生から「どんな内容だった?」と引き出しながら、最終的に要約の形まで持っていきましょう。

この時の注意点としては、「読書感想文」にしないことです。あくまで「要約」です。

習慣②:毎日1記事だけ「新聞」の切り抜きを行う。

本よりも習慣化しやすいのが、新聞」を利用することです。

とはいえ、新聞を読むなんてなかなか小学生にはハードルが高いです。そこで読みたいのが小学生新聞です。オススメは、読売新聞の小学生版「読売KODOMO新聞」。

週1発行(毎週木曜)なので、ゆったりとしたペースで始められるから、習慣化にはだいぶ適しています。また、月額550円なのもリーズナブルでいい。去年慶應中等部・普通部に合格した教え子のほとんどみんなが読んでいました。読むだけじゃなく、1日1記事だけ切り抜きをしてノートやルーズリーフに貼って、要約を書くようにしてました。

また、さらに知性を高めたいのであれば、大人向け新聞を週に1記事だけ読んで、これも切り抜き+要約をするのがオススメです。脱「小学生の範囲」のためにも大人向けのものにも無理のないペースで取り組んでいきたいところです。大人向け新聞のオススメは「日本経済新聞」です。

慶應出身者には経済界、政治界、法曹界に進む人が多いので、テーマ的に他の新聞よりも日経新聞が適しています。

とはいえ、「日経新聞なんて子どもには無理」なんて思う人も多いかと思いますが、「興味が持てそうな記事を週に1つだけ見つけて切り抜きと要約をする」という条件付きであれば問題ありません。そして、どの新聞も読んだことのないお子さんであればあるほど、むしろ抵抗なく着手できます。(ただ、もちろん親御さんがすでに読んでいる新聞があればそれでも構いません。)

小学生新聞も大人向けの新聞も、どちらもまずは全ページをサラッと目を通してみて、興味が持てるか持てないかのギリギリのテーマのものを1つだけ見つける。そして切り抜いてノートやルーズリーフに貼る。そして余白に、言葉の意味や要約を書く。そうやって知性を育んでいきましょう。

習慣③:週に1本の「映画」を観る。

ここからは「活字」ではなく、より「大人の範囲」に触れるための習慣です。

その中でも特にオススメなのが、週に1本の「映画」を観ることです。

内容としては、社会的なテーマのものがベストです。ドキュメンタリーとかですね。社会的なテーマ性のあるもの選んで、観て、知性を深めていきましょう。例えば最近の映画で言うと、

といった感じです。

社会的テーマを持った映画が数多く見れるクラウドサービスとして、「アップリンククラウド」もかなりオススメです。

アップリンクは渋谷や吉祥寺に劇場もあるので、都内に住んでいる方は劇場に足を運んでもいいかもしれませんね。

そういえば、お子さんが映画を観ることを楽しんで習慣化できるようにするために、毎週映画を観る日には子供と一緒にキャラメルポップコーンを作る親御さんもいました。こういったおまけの要素が、実はお子さんにとって大きかったりします。いろんな工夫も、楽しんでいきたいところですね。

習慣④:週に1本の「TED」プレゼンテーションを見る。

とはいえ、映画は平均で2時間ほど、短いものでも1時間強あるため、週によってはもう少しコンパクトに見れるもの必要です。

そこでおすすめなのが、TEDです。

理文問わずさまざまなプレゼンテーションやレクチャーの動画があるので、学習との整合性が実に高いのが利点です。

オススメの見方としては、まずは5分以内のものをピックアップしてみていくことです。内容は、タイトルを見て興味を持てたもので大丈夫です。

そして、これも見たあとに簡単でいいので要約してみましょう。

習慣⑤:休みの日、自分の足と目を使って学びに行く。

そして最後は、自分の足と目を使って学びに行く」ですじつはこれが慶應付属3中学で最も求められているものです

数千年前は、僕らの周りには自然があふれていました。だから、不思議なことだらけの自然とたくさん接することができて、毎日たくさんの不思議と出会い、そのたくさんの不思議について興味津々になり、そしてなぜだろう?と考えるようなっていました。

でも現代は、この自然が身の回りからどんどんとなくなっています。それはすなわち「不思議なもの」と接する機会が減るということであり、だから知的好奇心はにぶり、知性は育まれないわけです。そして知的好奇心が鈍った状態のまま、テキストや問題集と対峙したところで、やはり学びたいという意欲は歓喜されにくい。

だからこそ、知性を持ちたいのならば、いったんテキストを置き、部屋を出て、外に学びに行くことが必要なんです自然の中に行くのがベストでしょう。でも、便宜的に知的好奇心を喚起してくれる場所もでき始めているので、そういったところに行くのも手でしょう。たとえば、以下のようなものに行くのはいいかもしれません。

  • 空のきれいなキャンプ場に行って、天体観測をする。(グランピングとかもいいですよね。)
  • 動物園に行って、いろんな動物をただただボケっと観察する。
  • 水族館に行って、魚の気分になって水槽をずっと眺める。
  • 歴史を学び始めたから、大森貝塚に実際に行ってみる。
  • 宇宙のことを学ぶために、宇宙ミュージアム「TeNQ」に行ってみる。
  • 昔の地球を少し知るために、恐竜展に行ってみる。
  • 見てもよく分からないけど、賢そうなので美術館に行ってみる。
  • 好きそうなテーマの展示をやっている博物館に行ってみる。

などなど。

こうやって、まずは自分が興味を持てそうなことから、どんどん足を運んで、自分の目で学んでみる。興味の幅を広げていく。知的好奇心を喚起していく。その後で、それを満たすために本やテキストや問題集を活用していけばいいんです。こうやって中身のある知的好奇心を持つことが、一般的な受験生との差別化になるんです

この5つの方法は塾や家庭教師の勉強とセットで行える。

こんな風に5つの方法を挙げてみると、「塾以外にそんな時間はなかなか取れないよー。」と思う方もいるかもしれません。

でも、むしろ逆です。これら5つの方法は、子どもにとってはテキストや参考書や問題集をやるような座学的勉強の気分転換の役割を果たしてくれます。そして、やればやるほど座学的勉強との相乗効果が生まれます

学力が伸びにくく、合格しにくい子の多くは、座学以外をやろうとしないんです。そして親御さんも座学以外を禁止しがちなんです。「受験生なんだから我慢しなさい」とか平気で言ってしまう。それが知的好奇心をどんどん狭めているのに。すなわち、やる気をどんどん奪うことに直結してしまうのに。体をたくさん動かしたかったり、いろんなものに興味を持ちやすい時期に、子どもを室内に閉じ込めようし続けるのはマイナスの面が大きすぎます。

逆に、学力がどんどん伸びて志望校に合格する子の多くは、座学以外のところからたくさん学びます。だから知的好奇心がどんどん強化されて、日常から得られる知識の幅が広く、それだけじゃなくて深い。そして親御さんも塾や問題集以外から学ぶことをどんどん容認するんです。何なら併走するかのように一緒に知的好奇心を広げていきます。だから、どんどん仲良くなって行ったりします。

なので、ここで挙げた5つの方法はとてもおすすめです。受験のためだけじゃなく、親子関係のためにも。ぜひすぐにでもやってみてください。

というわけで、今回はこのあたりで。最後まで読んでくださって、ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう。