過去問から読み解く慶應からのメッセージ

過去問から読み解く慶應からのメッセージ① 「君はなぜ、慶應のことを知らずに受験するのか?」

たくと
たくと
みなさんこんにちは!

このブログは、慶應付属中専門の塾講師・家庭教師をしているたくと( @tact_roadtokeio ) がお送りしております。

さてさて、12月になりました。

小5の子にとっては、まもなく小6になるということで「いよいよ受験モードだ!」という子も多いでしょう。

この時期の子には、過去問から学校側が何を求めているのかを読み取る作業がとても大切だよーと伝えているんですが、とはいえ「どう読みとんねん」という子が多いのも事実。

というわけで、ちょっと新たに過去問から読み解く慶應からのメッセージ」というテーマで記事を書いていこうと思います。

直前期の小6の子にとっても、読むことで学びがある感じにできればと思っております。どうぞよろしくです。

今回読み解く過去問は、慶應中等部2021年度(令和3年度)社会大問2

というわけで、第1回目。いってみましょう!

今回読み解く過去問は、慶應中等部の2021年度(令和3年度)の社会、大問2です。

どんな問題か、ざっと見てみましょう。

【慶應中等部 2021年度 社会 大問2】
次の福沢諭吉についての年表を見て、各問いに答えなさい。

[年表]
1835年 (ア)藩の下級武士の子として(イ)で生まれる。
1854年 (ウ)に出て[A]語の初歩を学習する。
1855年 (イ)で適塾に入塾し、[A]語を本格的に学習する。
1858年 (エ)の築地鉄砲洲で[A]語の学塾を開設する。
1859年 (オ)に行くも[A]語が役に立たず、独学で英語の習得を開始する。
1860年 船でアメリカに渡り、サンフランシスコやハワイに滞在する。
1868年 鉄砲洲から芝新銭座に塾を移し、慶應義塾と命名する。
1872年 『学問のすゝめ』の初編を出版する。

[設問]
(1) (ア)~(オ)に当てはまる地名を選びなさい。
  1.江戸 2.大阪 3.下田
  4.長崎 5.中津 6.横浜

(2) [A]に入る言葉を選びなさい。
  1.イタリア 2.オランダ
  3.ドイツ  4.フランス

(3) 適塾を開いた人物を選びなさい。
  1.緒方洪庵 2.勝海舟
  3.林羅山  4.吉田松陰

(4) 福沢と同様に渡米したことのある人物を選びなさい。
  1.大久保利通 2.西郷隆盛
  3.坂本龍馬  4.吉田松陰

(5) 『学問のすゝめ』の冒頭の文について、次の文中の
  「〇」に共通して入る語句を答えなさい。

  「天は〇の上に〇をつくらず
   〇の下に〇をつくらずといへり」

(6) 福沢は、1901年の元旦に、世界が新しい時代を迎えたことへの感慨を表し、「独立自尊 迎新[B]」という書を記しました。[B]に入る言葉を漢字2字で答えなさい。

こんな問題が出題されました。(解けるかな?)

この過去問から読み取れること

驚くべき高配点

ご覧のように、慶應中等部2021年度の社会の大問2は、大問1個まるまる「福沢諭吉」をテーマにした問題でした。(これに似た問題は、さらに過去にもありました。)

そして内容もさることながら、特筆すべきは配点です。この大問2、配点はなんと12点です。

慶應中等部の社会は50点満点なので、社会の配点のうち24%もの比率を福沢諭吉に関する知識だけに割いているわけです

これがどういうことかわかりますか?

慶應のことを何も知らずに受験する受験生たち

小6の直前期になると、受験相談や指導依頼を頂くことが増え、その際、受験生本人にまずこんな質問をしています。

「慶應中等部(普通部/湘南藤沢)を志望ということだけど、慶應中等部(普通部/湘南藤沢)がどういう学校なのか、知っていることを雑でもいいからちょっと教えてもらえる?」

これに対して、けっこう多くの子が答えられません。言えてもこのくらい(↓)のことが多い。

「慶應大学の附属です。」「福沢諭吉が作った学校です。」

「ほかには?」

「・・・わかりません。」

こんなふうに、慶應を志望していない人でも知っているようなところくらいまでしか理解していない子がとても多いんですね。

今回取り上げた中等部2021年度(令和3年度)の社会大問2から読み取れるのは、慶應の先生方は、この「慶應のことを知らない」という状態をかなり問題視しているということです。

これから6年間をともに学ぶ「同志」となろうとしている人たちが、入ろうとしている学校のことを全然知らない。慶應の先生からしたら、こんな感覚(↓)でしょう。

受験生「慶應にどうしても入りたいです!」
慶應「では、わが校についてちゃんと理解していますか?」
受験生「もちろんしていません!」

別のことにたとえると、

Aくん「結婚してください!」
Bさん「え、わたしのどこが好きなの?」
Aくん「いや、誰かよく知りません!」

こんな感じなわけです。この状態でプロポーズされてもOKを出さないように、慶應についてちゃんと理解していない受験生には当然入学を許可したくないわけです

慶應の求めているものを把握せず、自分の欲のみで受験する受験生

こういった「よく分かってないけど志望する」という傾向は、昨今かなり顕著になってきています。特に大学入試においてセンター試験が共通テストに変わることが決まり、大学受験をすることに一定のリスクを感じ始めた親・先生の影響で慶應を目指し始めた子に特段多く感じます。

そういった子の中には、こんな風に話す子もけっこういます。

「え、慶應のことあんまり知らないのに、なんで慶應志望なの?」

「附属だから、入学出来たらもう勉強しなくていいじゃないですか。」

こういった本末転倒なことを平気で語る受験生も結構多いんですね。そりゃ大問1個まるまる使って自分たち(慶應)について知っているかを問いたくもなります。さっきと同様にまた例えてみると、より明確。

「え、わたしのことあまり知らないのに、なんでプロポーズするの?」

「結婚出来たら、あとはもうなんもしなくていいから楽じゃん。」

どちらにおいても、合格や結婚の先にある生活というものをまったく見れてなくて、そこを大事にするという意思もなくて、楽したい」という自分の欲のためだけに行動してしまっているわけです。

これだと、「あ、もう一切連絡してこないでください」って思いますよね。

慶應は何を求めているのか。

慶應中等部/普通部/湘南藤沢は、確かに入学したら基本的にはそのまま慶應大学に行くという道が開けていると言えるでしょう。

でも、だからこそ慶應の先生方は、受験時に厳しくフィルタリングしたいわけです。社会に限らず4教科すべての試験問題の中でもそのフィルタリング機能は働いており、それ以外にも時間をかけて面接までやるわけです。

では、いったいどんなことを求めているのでしょう?

それは、創設者である福沢諭吉の言葉で言うなら「独立自尊していること/もしくはそれを目指していること」でしょう

小6というのは、親からしたら「まだまだ子供」でしょう。でも、実際には小6にもなると自分の頭で考え、判断し、自分の道を自ら選択することが可能な状態にまで知能は発達しています。

でも、小6までにどう育ったかで、「まだ全然子供」な子もいれば、「もう立派な大人」な子もいて、その差は想像をかなり上回るほど開いています。1対1で指導してコミュニケーションをとっていると、「幼い小6」と「自立しつつある小4」でかなりの差を感じることが多々あります。いつまでも親や先生のせいにし続ける小6もいれば、何か上手くいかない時に「あれがダメだったなー」と自分を顧みる小4もいて、非常に大きな差が生まれていることを強く感じます。

つまり、「独立自尊」の状態の子とそうでない子の差が小6の段階でかなり明確に分かれているわけです。そして慶應としては、前者なのか後者なのかを入学前にしっかりチェックしたいわけです。「独立自尊」の状態ではなく、なんならその言葉の意味すら知らない人に入学してもらっても、双方が困るわけです。

慶應が大切にしている「独立自尊」、それはすなわち福沢諭吉が慶應義塾を創設するにあたって大切にした思いです。

だから、福沢諭吉について大問1個、約25%をも割いて受験生に問うわけです。

4教科勉強するのは大事だよ。でもさ、それ以前に、ものごとを学ぶことの根底にあるものをもっと学んできてよ。そうじゃなきゃ、来ても意味ないって。僕らも困るし、君自身も入学後に大変な思いをすることになるよ。

そんな慶應からのメッセージが、今回の問題には含まれています。

福沢諭吉について学ぼう。

というわけで、もし慶應を目指すのであれば、できるだけ早い段階で慶應の根底、すなわち福沢諭吉の思想について学ぶことが必要不可欠でしょう。

福沢諭吉の思想を学ぶための方法論としては、その著作を読むことが必要で、そのうえで学校のWebサイトからも学校側の求めているものを把握したいところです。

また、福沢諭吉の著作はたくさんありますが、上記の目的であれば「福翁自伝」と「学問のすゝめ」の2冊がマストだと言えるでしょう。前者は、福沢諭吉の自伝ですね。後者は、学問をする意義を個人視点~国家視点という幅広い視点で説いたものです。

慶應を目指すのであれば、この2冊の原書を必読にしたいところです。ただ、小学生にとってはかなり難解で、読み進めるのはかなーり難しい。

なので、小学生が「福翁自伝」と「学問のすゝめ」から学ぶ際の初読書としてオススメなのが、こちら(↓)

まんがで読破 学問のすすめ

タイトルは「学問のすすめ」ですが、内容としては前半70%くらいが『福翁自伝』、後半30%くらいが『学問のすゝめ』になっており、2冊の内容をいっぺんに学ぶことができます

目次。P.12からが『福翁自伝』、P.152からが『学問のすすめ』の内容になってます。

さらに、すべてマンガになっているので、かなり気軽に読み進めることができます。

マンガなので非常に読みやすく、30分~1時間で読み終わるのが良い。

これを読んだ後に、『福翁自伝』や『学問のすゝめ』の原書に行くのもありだけど、そんな余裕はないよーという子は、入学後の楽しみにとっておくのも良いかなと思います。

ちなみに、この本は結構前に一度出版されましたが、先月(2023年11月)に少し改定されて新しくなりました。ただ、中身はほぼ変わっていないので、以前のもの(旧版)を読んだことのある方は新しく読み直す必要はさほどないかと思います

また、旧版であればkindle unlimitedで無料で読めるので、登録している方はまずはそちらで読むのもありですね。(→kindle unlimited)

ではでは、今回はこのあたりで。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。