さて、今回は「慶應付属中合格者からの質問集」の第6回をお送りします。
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「慶應合格者からの質問集」
今回も、慶應付属3中学に合格した生徒さんが受験生時代にしてくれた質問や疑問を通して、慶應付属3中学が求めている「知性」というものについて少し考えてみましょう。
慶應付属中合格者からの質問#6 「『戦争』と『紛争』の違いってなんですか?」
第6回目の今回は、昨年慶應中等部に合格した生徒さんが小6のときにくれた質問です。
その日の授業は、そんな感じで始まりました。
「戦争」「内戦」「紛争」の辞書的意味の違い。
さて、というわけで今回は「戦争」「内戦」「紛争」という言葉の違いについて見ていきましょう。
第二次世界大戦以降、日本は戦争状態にはなっていませんが(便宜的に「戦争」という言葉を使っています)、世の中には未だたくさんの「争い」が存在しています。
そしてそのたくさんの「争い」に対して、「戦争」であったり、「紛争」であったり、「内戦」であったり、いろんな種類の言葉が使われています。
これらの言葉の違い、ご存じですか?
この3つの言葉の違いを知るために、まずはひとつひとつ理解していきましょう!
「戦争」の意味。
この3つの言葉の中で、もっともよく目にするのが「戦争」という言葉でしょう。
この「戦争」という言葉は、(武力を伴った)国家間の争いに対して使われます。さらに厳密に言うなら、「宣戦布告が行われた」という条件も含まれます。
なので、「日本とアメリカの戦争」という使い方は正しいですが、「田中くんと山田くんの戦争」という使い方はしないわけです。(田中くんと山田くんが日本から独立した場合は除く。←この説明はいらない。)
というわけでまとめると、
「戦争」…(宣戦布告が行われた)国家間の武力を伴った争いのこと。
となります。
「内戦」の意味。
そしてこの「戦争」と対比的な言葉が、「内戦」です。これは漢字からも意味が分かりますよね。
「内戦」という言葉は、(武力を伴った)国家内での争いに対して使われます。より厳密に言うなら、ある国の中での、同じ国民同士の争いに対して使われます。
なので、「ベトナム国内での内戦」といった形で使われるわけです。
というわけでまとめると、
「内戦」…国内での同じ国民同士の武力を伴った争いのこと。
となります。
「紛争」の意味。
そして3つ目は「紛争」という言葉です。
この「紛争」という言葉は、すべての「争いごと」を意味します。
つまり、戦争も内戦もこの「紛争」の中に含まれるということです。
また、戦争・内戦に含まれないその他の争いも「紛争」の中に含まれます。武力を伴わない争い、個人間の争い、企業間の争いなどがこの「紛争」には含まれる、ということです。
まとめると、
「紛争」…すべての争いのこと。(個人間の争い、企業間の争い、民族間の争い、国家間の争い、など。)
となります。
「戦争」と「紛争」の実際に用いられる際の違い。
ここまでで「戦争」「内戦」「紛争」の意味とその違いについて見てきました。
しかし実際にニュースなどで使われる際には、上のような辞書的な意味合いとは少しちがったニュアンスで使われることがしばしばあります。
どういうことかというと、「戦争」と「紛争」という言葉は、争いの規模・期間によって使い分けられることが多いんです。
具体的には、国家間での争いに対しては基本的に「戦争」という言葉が使われますが、その中でも比較的小規模・短期間の争いに対しては「紛争」という言葉が使われることが多いんです。
フォークランド紛争を「戦争」と書かない理由。
さて、この使い分けが如実に表れているのが冒頭の「フォークランド紛争」です。
あまり深く知らない方のためにフォークランド紛争のおさらいを少ししておくと、フォークランド紛争は大西洋にあるフォークランド諸島の領有をめぐるイギリスとアルゼンチンの争いのことです。1982年の3月から6月の3か月間にわたる武力を伴った争いで、イギリスの勝利で終わりました。その過程で、両国合わせて1000人弱の犠牲者が出ました。
察しのいい方はもうお分かりかと思いますが、フォークランド紛争は「1982年3月から6月の3か月間」と比較的短期間の争いなんです。なので、日本では「紛争」という言葉を用いて「フォークランド紛争」と呼ぶわけです。
ちなみに、英語圏の国では「Folklands War」もしくは「Folklands Conflict」と呼ばれています。「War」と「Conflict」のどちらの表記もされているので、「戦争」と訳しても「紛争」と訳しても問題はないわけです。ただ、日本では上記のような使い分けが行われているため基本的には「紛争」と訳すことが多いんですね。
まとめ。(慶應付属3中学は「咀嚼して学ぶ」という姿勢を求めている。)
慶應付属3中学に限らず上位校の多くは、「飲み込まずにしっかりと咀嚼する」という姿勢を受験生にとても強く求めています。
なぜなら、「しっかりと咀嚼する」という作業は、「飲み込まずに立ち止まって疑問を持ち、その疑問に対してしっかりと考え、納得し、理解する」という作業だからです。その結果として深い理解と知性が身に付き、さらに副産物として勝手に頭の中に残るんです。暗記という作業をする必要なく、記憶されるわけです。
また、咀嚼をしていく過程で新たな疑問やさらに知りたい事項が生まれます。そうやって、知的好奇心の強化にもつながっていくです。
理科や社会を暗記科目だと捉えてひたすら表面的に暗記する1日と、咀嚼して深く理解する1日。1日で見れば大した差はないように感じるかもしれませんが、その集積は本当に大きな差になります。
これは中学受験に限らず、その先の学習においてもです。その差は中高6年間の間にかなり大きな差になるわけです。だから、中学側は中学受験というセレクションの場で、その「咀嚼する」という作業をしているかどうかのふるい分けをしたいわけです。そのための問題が、入試問題には課されるわけです。
だから、この点をできるだけ早い段階でお子さん・親御さんが把握して、しっかりと「咀嚼」をしながら日々の学習を積み重ねていくことが、慶應付属3中学合格を目指すにはとても重要なんです。
もしまだのようでしたら、1日1テーマとかでもいいので、「咀嚼して学ぶ」という姿勢を身に着けるための時間を取るように心がけてみて下さいね。
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というわけで、今回はこのあたりで。
これからも「慶應付属中合格者からの質問集」を追加していく予定ですので、もしご興味あるようでしたらブログのブックマークを、もしくは更新情報を投稿しているtwitterのフォローをよろしくお願いいたします。
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ではでは、ご覧くださってありがとうございました。
また次回、お会いしましょう。